建設業での役員に監査役は含まれない?

建設業の許可申請の際には、法人の役員について記載する用紙があります。例えば、別表や略歴書などがあります。

通常、株式会社の役員といえば、取締役と監査役などを指しますが、建設業においては、監査役は役員とされていません。

ですので、冒頭の別表を作成する際に監査役の記入は不要ですし、役員の略歴書も監査役については、作成不要です。

 

建設業においての役員というのは、取締役、合名会社・合資会社の無限責任社員、合資会社の有限責任社員(業務執行権を与えている場合)、合同会社の有限責任社員、事業協同組合・協同組合の理事をいいます。

監査役、監事、業務執行権を付与されていない合資会社の有限責任社員は、役員ではありません。

※ 合資会社の有限責任社員は、平成18年5月の新会社法施行以降に設立された合資会社の有限責任社員には業務執行権が最初からありますので、役員として認められますが、新会社法施行前に設立された合資会社の有限責任社員は業務執行権がありませんので、役員として認められません。ただし、新会社法が施行された以降に、有限責任社員に業務執行権を付与する手続きをおこなっている合資会社の有限責任社員は、それ以降は、役員として認めれます。

 

学校教育法に基づく学校とは?

学校教育法に基づく学校とは、

幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・大学・高等専門学校・盲学校・聾学校及び養護学校

をいいます。(学校教育法第1条)

この中で、建設業に関係するところとしては、高等学校・中等教育学校・大学・高等専門学校となります。

・高等学校・中等教育学校の卒業の場合には、実務経験が5年以上

・大学・高等専門学校の卒業の場合には、実務経験が3年以上

必要となります。

 

高等職業技術専門校・専門学校・中小企業大学校、防衛大学校・警察大学校・農業大学校などは、専任技術者の要件を満たす学校ではありませんので、ご注意ください。

 

また、単に、卒業するだけではなく、取りたい業種によって、次の所定学科を卒業している必要があります。

     ↓

  所定学科一覧

 

ただし、上記の学科名と違う場合も多いかと思いますが、その場合は、その学科名から判断し、それでも微妙な場合は、成績証明書を取って、要件を満たしていることを確認することになります。

 

事業目的に建設工事の施工が入っていないとダメ?

登記簿謄本の事業目的に、建設工事の請負に関する内容の記載がない場合には、別の書類を用意して確認することになります。

そもそも登記簿謄本の事業目的は、経営業務管理責任者としての経験があるかどうかを見るために許可申請の際に添付を求められています。

実際には、登記簿謄本の事業目的を見ただけでは、建設工事の請負の契約業務についての経験があるとはいえません。事業目的が記載されているだけだからです。会社を設立するときに、将来おこなうかもしれないということで記載していることも多いので、本当のところは、

「事業目的に建設工事の請負工事の記載がある=役員として建設工事の請負の契約業務をおこなっていた」

とはならないのですが、逆に、事業目的に記載があるということは、

「役員として建設工事の請負に関する契約業務をおこなっていただろう」

ということで、第1段階としては、経験があることを推定するということで事業目的の記載を登記簿謄本で確認することになっています。

 

第2段階として、5年あるいは7年分の契約書や請求書・請書・発注証明書などを各社の書類の状況に応じて、証明したい年数(5年又は7年)分、年1件ずつ用意することになります。

 

この2つの書類によって、経営業務管理責任者としての要件を満たすことを証明することになります。

 

しかし、登記簿謄本の事業目的に「建設工事の施工請負」などの記載がない場合は、第1段階で経営業務管理責任者としての要件を満たしているかどうかを推定できませんので、第2段階で用意する契約書等を証明したい年数(5年又は7年)分準備して、「事業目的に記載はないけど、確かに建設工事の請負をおこなっている」ということを証明することになります。

準備する書類は、1年に4~5枚(3ヶ月に1枚)ぐらいの契約書等が必要となります。

ですので、証明したい年数が5年の場合には、準備する契約書等は、1年に4~5枚ですので、5年で20~25枚用意する必要があります。

 

また、登記簿謄本の事業目的に建設工事の施行に関する請負の記載がない場合で、許可申請の際に2業種申請するときには、1つの業種で7年分の契約書等の書類を集めたほうが少なくすみます。

 

この書類の準備が一番大変かと思いますので、普段から書類の管理はしっかりしておくと準備しやすいかと思います。

 

5年の経験があるのに経営業務管理責任者の要件を満たしていない?

建設業許可を取得するための要件の1つに、経営業務管理責任者が常勤していることというものがあります。

具体的には、

・申請業種に関して、5年以上の経験

・申請業種以外に関して、7年以上の経験

が必要となります。

ただ、この経験年数は、単に役員あるいは個人事業主としての経験があればいいものではありません。

というのは、この経験年数を証明するために、契約書か注文書と請書控のセットか注文書等と発注者の発注証明書のうちのどれかが年1件必要となります。

申請業種が1つで、5年の経験を証明するのであれば、契約書等が5枚必要となることになります。

例えば、今年設立5年を迎え、建設業許可を新規申請する場合には、平成14年~平成19年の年1件ずつ必要となります。

ですので、会社を設立してから5年経っていて役員経験を登記簿謄本で確認できても、各年ごとに証明できなければ申請できません。

法人の役員あるいは個人事業主として、経験があるだけではなく、実際に工事を請け負っている必要があります。

経営業務管理責任者としての要件としては、

・5年あるいは7年以上の経験がある

・5年あるいは7年の経験を各年1件ずつ証明する書類が用意できる

以上の2つを満たす必要があるということです。

 

契約書がない!

建設業の許可の要件の1つに「経営業務管理責任者がいること」というものがあります。

この経営業務管理責任者としての経験があるかどうかを同業者に証明してもらうほかに、5年か7年の経験年数に応じて、1年に1件ずつ、下記の書類のどれかを申請業種ごとに提出する必要があります。

①契約書

②注文書及びそれに対応する請書控

③注文書、請求書、見積書のいずれか及びそれに対応する発注者の発注証明書

が必要になります。

①の契約書は、工事ごとに必要となりますので、なかなか揃わないというのが実情です。

そうなると、②か③となるのですが、現実的には、③の注文書と発注証明書を提出することが多いかもしれません。

発注証明書とは、その名のとおり、注文書に記載がある工事について、発注者が「確かに発注しました!」ということを証明するものです。

お付き合いのある会社であれば、問題なく押印してくれるかと思います。

ただ、証明をする方が、「契約締結の権限がある方」となっていますので、発注者によっては、証明をもらうのに時間がかかるかもしれませんので、その期間も申請までの期間の中に考慮しておく必要があるかと思います。

 

また、発注者の会社名が変更により工事を請けていたときと違っている場合には、登記簿謄本を提出することも必要になりますので、手間が増える可能性があります。

 

 

財務諸表は税抜き?税込み?

建設業許可を新規に申請する場合や、許可取得後に、事業年度終了届を提出する場合に、財務諸表を作成しなければいけません。

この財務諸表は、決算書をもとに記入していくのですが、消費税をどうするかという点で意外に迷います。

結論からいうと、税理士さんが作成する通常の決算書にあわせて記載すれば大丈夫です。

決算書が消費税込みであれば、消費税込みで建設業の財務諸表も作成し、消費税抜きであれば、消費税抜きで作成します。

ただし、公共工事に入札することをお考えの場合には、財務諸表は、税理士さんが作成する決算書に関わらず、消費税抜きで作成する必要があります。

 

ですので、財務諸表の完成工事高と同じ数字になる直前3年の工事施工金額に関しても、財務諸表にあわせて記入することになります。

 

ただ、工事経歴書に関しては、公共工事に入札するかどうかに関わらず、消費税込みの請負金額を記載することになりますので、ご注意ください。

 

消費税込みかどうかは、数字が変わることですので、建設業許可の新規申請や事業年度終了届の作成時には、以外な落とし穴となり、気をつけたいところです。

 

経営業務管理責任者は5年でOK?

建設業許可の要件の1つに、

経営業務管理責任者としての経験がある方が常勤していること

が必要となります。

具体的には、

・申請する業種に関してであれば、5年以上の経験

・申請する業種以外に関してであれば、7年以上の経験

が必要となります。

ですので、たとえば、電気工事業に関して、5年の役員経験があり、電気通信工事業を一緒に申請する場合には、電気工事業に関して、7年以上の役員経験がない場合には、電通信事工事業に関しては、一緒に申請できないことになります。

ただ、建設業許可事務の取扱い等についてまとめてたガイドライン(建設業許可事務ガイドライン)の中で、次のような誤解するような文言があります。

本号は、許可を受けようとする建設業について、本号のイ又はロに該当する者を一の建設業ごとにそれぞれ個別に置いていることを求めるものではなく、したがって二以上の建設業について許可を行う場合において、一の建設業につき本号のイ又はロの要件を満たしている者が、他の建設業についても本号のイ又はロの要件を満たしているときは、当該他の建設業についてもその者をもって本号の要件を満たしているとして取り扱う。

※ 本号とは、建設業法7条1号のことです。

【建設業法7条1号】 

国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。

1.法人である場合においてはその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)のうち常勤であるものの一人が、個人である場合においてはその者又はその支配人のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に関し5年以上経営業務の管理者任者としての経験を有する者
ロ 国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者

 

下線の部分は、5年以上の役員経験があれば、ほかの業種でも役員経験があるものとして取り扱うというように読むことができます。

ただ、実際には、

・申請する業種に関してであれば、5年以上の経験

・申請する業種以外に関してであれば、7年以上の経験

がないと申請できません。

誤解を与えるような文言ですので、注意したいところです。

経営業務管理責任者の証明者は誰になる?

建設業許可の要件の中でも重要なものの1つに「経営業務管理責任者がいること」というものがあります。

この経営業務管理責任者がいることを証明するために作成する書類が、「経営業務の管理責任者証明書」となります。

 

経営業務の管理責任者証明書とは、申請しようとする業種についての経験年数が本当かどうかを証明する書類ですが、許可を受けている使用者に証明してもらう必要がありますので、取引先に証明してもらうことがほとんどです。

※ 申請しようとする会社の業種と証明をもらう会社の業種は同じである必要はありません。

自分で証明することが認められるのは、

①自分が経営していた会社が倒産して、再度会社を立ち上げ、建設業許可を取得する場合

②会社の代替わり(事業承継)

この2つぐらいかと思われます。

①の場合でも、

・以前に経営していた会社の、「経営業務の管理責任者証明書」で5年以上(7年の場合もあります)の経営経験があることが証明されていること

・以前に経営していた会社が、今回申請する会社と同一業種であること

※ 申請する業種によって、必要な経験年数が変わる場合があります。

 

結論は、 「経営業務の管理責任者証明書」の証明者は、

許可をもっている取引先・同業者

が基本的な証明者となります。

  

では、許可を有している業者であれば、どの業者でもよいのか?という疑問があります。

結論からいえば、許可を受けている業者の証明であれば、どの業者でもよいです。

極端な話、申請する直前に許可を受けた業者でもOKということです。 

ただ、経営業務管理責任者は、5年又は7年の経験が必要ですので、その経験があることを証明する業者は、

①5年又は7年前から許可を有している

②被証明者(証明をもらう会社)と5年又は7年以上付き合いがある

この2つの要件を満たしていることが本質的には望ましいといえます。

 

 

付帯工事とは?

建設業者は、許可を受けた業種の工事のほかに、それに付帯するほかの業種の工事も請け負うことができます。

例えば、電気工事をおこなうにあたって、内装仕上工事に該当するものも施工しなければいけない場合がありますが、この内装仕上工事は、電気工事の付帯工事として、施工することができるとされています。

 

「建設業許可事務ガイドライン」では、付帯工事を

主たる建設工事を施工するために生じたほかの従たる建設工事又は主たる建設工事の施工により必要を生じた他の従たる建設工事であって、それ自体が独立の使用目的に供されるものではないもの

と記載されています。

 

建設工事は、請け負った工事に関連する工事もおこなわないと進まない工事があり、別々に発注しないといけないということでは、不都合を生じるということで、付帯工事の施工に関しても認められています。

 

ただ、軽微な工事以外の場合は、その付帯工事に関して、一般建設業の要件を満たす者がいなければ施工することができません。

なんでもかんでも、付帯工事で施工できるわけでありませんので、ご注意ください。

 

※ 軽微な工事とは、工事1件の請負代金の額が

・建築工事一式の場合・・・1,500万円未満の工事又は延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事

・そのほかの建設工事の場合・・・500万円未満の工事

をいいます。

 

公共工事に入札するには?

国や地方公共団体が発注する公共工事では、入札という制度が採られています。

公共工事というのは、

一  鉄道、軌道、索道、道路、橋、護岸、堤防、ダム、河川に関する工作物、砂防用工作物、飛行場、港湾施設、漁港施設、運河、上水道又は下水道
二  消防施設、水防施設、学校又は国若しくは地方公共団体が設置する庁舎、工場、研究所若しくは試験所
三  電気事業用施設(電気事業の用に供する発電、送電、配電又は変電その他の電気施設をいう。)又はガス事業用施設(ガス事業の用に供するガスの製造又は供給のための施設をいう。)
四  前各号に掲げるもののほか、紛争により当該施設又は工作物に関する工事の工期が遅延することその他適正な施工が妨げられることによつて公共の福祉に著しい障害を及ぼすおそれのある施設又は工作物で国土交通大臣が指定するもの

をいいます。(建設業法施行令第15条) 

 

公共工事は、税金でまかなわれいますので、適正に施工できるかどうかについて、審査をし、一定の資格をもった方の中から入札により、発注するという方法が取られています。

この審査には、2つあり、1つが経営事項審査といわれるもので、経営規模・財務内容等を客観的に審査するものです。もう1つが、経営事項審査の結果に、工事成績などの主観的事項を加えて、点数化することで、点数に応じて格付けをおこない、受注できる工事の範囲を決める入札参加資格というものあります。

この2つの審査を経て、入札し落札できれば、公共工事を受注!ということになります。

 

公共工事に入札したい場合の流れとしては、

①事業年度終了届を提出

     ↓

②経営事項審査

     ↓

③入札参加資格申請

     ↓

④入札

というような流れとなります。

 

【参考】

経営事項審査とは

経営事項審査の流れと費用

経営事項審査の申請書類