専任技術者の実務経験ってどんな経験?

専任技術者の「実務経験」とは、許可を受けようとする建設工事に関する技術上の経験をいいます。

具体的には、建設工事の施工を指揮、監督した経験及び 実際に建設工事の施工に携わった経験などであり、「実務経験」は請負人の立場における経験のみならず、建設工事の注文者側において設計に従事した経験あるいは現場監督技術者としての経験も含まれます。

ただし、工事現場の単なる雑務や事務の仕事に関する経験は含まれません。

 

許可申請の際の、実務経験証明書には、証明が必要な年数(3年又は5年又は10年)を年1件ずつ工事名・工事期間等を記載することとなります。

 

専任技術者は現場に出ることができない?

専任技術者は、基本的に現場に出ることはできません。

これは、専任技術者の仕事が、営業所での請負契約に際して、技術的な部分のやりとりをすることですので、基本的に営業所にいなければいけないからです。

 

ただ、営業所において請負契約が締結された建設工事で、工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事しうる程度に工事現場と営業所が近くにあり、営業所との間で常時連絡をとりうる体制にあるものについては、「営業所に常勤して専らその職務に従事」しているものとして兼任が認められています。

 

とても曖昧な表現ですが、例外的ですので、専任技術者が現場に出ることはできないと考えておいたほうが良いでしょう。

 

建設業での役員に監査役は含まれない?

建設業の許可申請の際には、法人の役員について記載する用紙があります。例えば、別表や略歴書などがあります。

通常、株式会社の役員といえば、取締役と監査役などを指しますが、建設業においては、監査役は役員とされていません。

ですので、冒頭の別表を作成する際に監査役の記入は不要ですし、役員の略歴書も監査役については、作成不要です。

 

建設業においての役員というのは、取締役、合名会社・合資会社の無限責任社員、合資会社の有限責任社員(業務執行権を与えている場合)、合同会社の有限責任社員、事業協同組合・協同組合の理事をいいます。

監査役、監事、業務執行権を付与されていない合資会社の有限責任社員は、役員ではありません。

※ 合資会社の有限責任社員は、平成18年5月の新会社法施行以降に設立された合資会社の有限責任社員には業務執行権が最初からありますので、役員として認められますが、新会社法施行前に設立された合資会社の有限責任社員は業務執行権がありませんので、役員として認められません。ただし、新会社法が施行された以降に、有限責任社員に業務執行権を付与する手続きをおこなっている合資会社の有限責任社員は、それ以降は、役員として認めれます。

 

学校教育法に基づく学校とは?

学校教育法に基づく学校とは、

幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・大学・高等専門学校・盲学校・聾学校及び養護学校

をいいます。(学校教育法第1条)

この中で、建設業に関係するところとしては、高等学校・中等教育学校・大学・高等専門学校となります。

・高等学校・中等教育学校の卒業の場合には、実務経験が5年以上

・大学・高等専門学校の卒業の場合には、実務経験が3年以上

必要となります。

 

高等職業技術専門校・専門学校・中小企業大学校、防衛大学校・警察大学校・農業大学校などは、専任技術者の要件を満たす学校ではありませんので、ご注意ください。

 

また、単に、卒業するだけではなく、取りたい業種によって、次の所定学科を卒業している必要があります。

     ↓

  所定学科一覧

 

ただし、上記の学科名と違う場合も多いかと思いますが、その場合は、その学科名から判断し、それでも微妙な場合は、成績証明書を取って、要件を満たしていることを確認することになります。

 

事業目的に建設工事の施工が入っていないとダメ?

登記簿謄本の事業目的に、建設工事の請負に関する内容の記載がない場合には、別の書類を用意して確認することになります。

そもそも登記簿謄本の事業目的は、経営業務管理責任者としての経験があるかどうかを見るために許可申請の際に添付を求められています。

実際には、登記簿謄本の事業目的を見ただけでは、建設工事の請負の契約業務についての経験があるとはいえません。事業目的が記載されているだけだからです。会社を設立するときに、将来おこなうかもしれないということで記載していることも多いので、本当のところは、

「事業目的に建設工事の請負工事の記載がある=役員として建設工事の請負の契約業務をおこなっていた」

とはならないのですが、逆に、事業目的に記載があるということは、

「役員として建設工事の請負に関する契約業務をおこなっていただろう」

ということで、第1段階としては、経験があることを推定するということで事業目的の記載を登記簿謄本で確認することになっています。

 

第2段階として、5年あるいは7年分の契約書や請求書・請書・発注証明書などを各社の書類の状況に応じて、証明したい年数(5年又は7年)分、年1件ずつ用意することになります。

 

この2つの書類によって、経営業務管理責任者としての要件を満たすことを証明することになります。

 

しかし、登記簿謄本の事業目的に「建設工事の施工請負」などの記載がない場合は、第1段階で経営業務管理責任者としての要件を満たしているかどうかを推定できませんので、第2段階で用意する契約書等を証明したい年数(5年又は7年)分準備して、「事業目的に記載はないけど、確かに建設工事の請負をおこなっている」ということを証明することになります。

準備する書類は、1年に4~5枚(3ヶ月に1枚)ぐらいの契約書等が必要となります。

ですので、証明したい年数が5年の場合には、準備する契約書等は、1年に4~5枚ですので、5年で20~25枚用意する必要があります。

 

また、登記簿謄本の事業目的に建設工事の施行に関する請負の記載がない場合で、許可申請の際に2業種申請するときには、1つの業種で7年分の契約書等の書類を集めたほうが少なくすみます。

 

この書類の準備が一番大変かと思いますので、普段から書類の管理はしっかりしておくと準備しやすいかと思います。

 

5年の経験があるのに経営業務管理責任者の要件を満たしていない?

建設業許可を取得するための要件の1つに、経営業務管理責任者が常勤していることというものがあります。

具体的には、

・申請業種に関して、5年以上の経験

・申請業種以外に関して、7年以上の経験

が必要となります。

ただ、この経験年数は、単に役員あるいは個人事業主としての経験があればいいものではありません。

というのは、この経験年数を証明するために、契約書か注文書と請書控のセットか注文書等と発注者の発注証明書のうちのどれかが年1件必要となります。

申請業種が1つで、5年の経験を証明するのであれば、契約書等が5枚必要となることになります。

例えば、今年設立5年を迎え、建設業許可を新規申請する場合には、平成14年~平成19年の年1件ずつ必要となります。

ですので、会社を設立してから5年経っていて役員経験を登記簿謄本で確認できても、各年ごとに証明できなければ申請できません。

法人の役員あるいは個人事業主として、経験があるだけではなく、実際に工事を請け負っている必要があります。

経営業務管理責任者としての要件としては、

・5年あるいは7年以上の経験がある

・5年あるいは7年の経験を各年1件ずつ証明する書類が用意できる

以上の2つを満たす必要があるということです。

 

契約書がない!

建設業の許可の要件の1つに「経営業務管理責任者がいること」というものがあります。

この経営業務管理責任者としての経験があるかどうかを同業者に証明してもらうほかに、5年か7年の経験年数に応じて、1年に1件ずつ、下記の書類のどれかを申請業種ごとに提出する必要があります。

①契約書

②注文書及びそれに対応する請書控

③注文書、請求書、見積書のいずれか及びそれに対応する発注者の発注証明書

が必要になります。

①の契約書は、工事ごとに必要となりますので、なかなか揃わないというのが実情です。

そうなると、②か③となるのですが、現実的には、③の注文書と発注証明書を提出することが多いかもしれません。

発注証明書とは、その名のとおり、注文書に記載がある工事について、発注者が「確かに発注しました!」ということを証明するものです。

お付き合いのある会社であれば、問題なく押印してくれるかと思います。

ただ、証明をする方が、「契約締結の権限がある方」となっていますので、発注者によっては、証明をもらうのに時間がかかるかもしれませんので、その期間も申請までの期間の中に考慮しておく必要があるかと思います。

 

また、発注者の会社名が変更により工事を請けていたときと違っている場合には、登記簿謄本を提出することも必要になりますので、手間が増える可能性があります。

 

 

財務諸表は税抜き?税込み?

建設業許可を新規に申請する場合や、許可取得後に、事業年度終了届を提出する場合に、財務諸表を作成しなければいけません。

この財務諸表は、決算書をもとに記入していくのですが、消費税をどうするかという点で意外に迷います。

結論からいうと、税理士さんが作成する通常の決算書にあわせて記載すれば大丈夫です。

決算書が消費税込みであれば、消費税込みで建設業の財務諸表も作成し、消費税抜きであれば、消費税抜きで作成します。

ただし、公共工事に入札することをお考えの場合には、財務諸表は、税理士さんが作成する決算書に関わらず、消費税抜きで作成する必要があります。

 

ですので、財務諸表の完成工事高と同じ数字になる直前3年の工事施工金額に関しても、財務諸表にあわせて記入することになります。

 

ただ、工事経歴書に関しては、公共工事に入札するかどうかに関わらず、消費税込みの請負金額を記載することになりますので、ご注意ください。

 

消費税込みかどうかは、数字が変わることですので、建設業許可の新規申請や事業年度終了届の作成時には、以外な落とし穴となり、気をつけたいところです。

 

経営業務管理責任者は5年でOK?

建設業許可の要件の1つに、

経営業務管理責任者としての経験がある方が常勤していること

が必要となります。

具体的には、

・申請する業種に関してであれば、5年以上の経験

・申請する業種以外に関してであれば、7年以上の経験

が必要となります。

ですので、たとえば、電気工事業に関して、5年の役員経験があり、電気通信工事業を一緒に申請する場合には、電気工事業に関して、7年以上の役員経験がない場合には、電通信事工事業に関しては、一緒に申請できないことになります。

ただ、建設業許可事務の取扱い等についてまとめてたガイドライン(建設業許可事務ガイドライン)の中で、次のような誤解するような文言があります。

本号は、許可を受けようとする建設業について、本号のイ又はロに該当する者を一の建設業ごとにそれぞれ個別に置いていることを求めるものではなく、したがって二以上の建設業について許可を行う場合において、一の建設業につき本号のイ又はロの要件を満たしている者が、他の建設業についても本号のイ又はロの要件を満たしているときは、当該他の建設業についてもその者をもって本号の要件を満たしているとして取り扱う。

※ 本号とは、建設業法7条1号のことです。

【建設業法7条1号】 

国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。

1.法人である場合においてはその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)のうち常勤であるものの一人が、個人である場合においてはその者又はその支配人のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に関し5年以上経営業務の管理者任者としての経験を有する者
ロ 国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者

 

下線の部分は、5年以上の役員経験があれば、ほかの業種でも役員経験があるものとして取り扱うというように読むことができます。

ただ、実際には、

・申請する業種に関してであれば、5年以上の経験

・申請する業種以外に関してであれば、7年以上の経験

がないと申請できません。

誤解を与えるような文言ですので、注意したいところです。

経営業務管理責任者の証明者は誰になる?

建設業許可の要件の中でも重要なものの1つに「経営業務管理責任者がいること」というものがあります。

この経営業務管理責任者がいることを証明するために作成する書類が、「経営業務の管理責任者証明書」となります。

 

経営業務の管理責任者証明書とは、申請しようとする業種についての経験年数が本当かどうかを証明する書類ですが、許可を受けている使用者に証明してもらう必要がありますので、取引先に証明してもらうことがほとんどです。

※ 申請しようとする会社の業種と証明をもらう会社の業種は同じである必要はありません。

自分で証明することが認められるのは、

①自分が経営していた会社が倒産して、再度会社を立ち上げ、建設業許可を取得する場合

②会社の代替わり(事業承継)

この2つぐらいかと思われます。

①の場合でも、

・以前に経営していた会社の、「経営業務の管理責任者証明書」で5年以上(7年の場合もあります)の経営経験があることが証明されていること

・以前に経営していた会社が、今回申請する会社と同一業種であること

※ 申請する業種によって、必要な経験年数が変わる場合があります。

 

結論は、 「経営業務の管理責任者証明書」の証明者は、

許可をもっている取引先・同業者

が基本的な証明者となります。

  

では、許可を有している業者であれば、どの業者でもよいのか?という疑問があります。

結論からいえば、許可を受けている業者の証明であれば、どの業者でもよいです。

極端な話、申請する直前に許可を受けた業者でもOKということです。 

ただ、経営業務管理責任者は、5年又は7年の経験が必要ですので、その経験があることを証明する業者は、

①5年又は7年前から許可を有している

②被証明者(証明をもらう会社)と5年又は7年以上付き合いがある

この2つの要件を満たしていることが本質的には望ましいといえます。